優しいカレの切ない隠し事


今なら、仕事モードに変わった圭介の方が話し易い。

わたしの素朴な質問に、圭介は饒舌に答え始めたのだった。

「実はあったんだよ。プレゼンがね。それはオレが担当だったから、この取材には相当気合いを入れてるんだ」

「へぇー」

そうか。

思えば、こういうところの隠し事も上手い。

役職上、簡単に口には出せない機密情報も手にするわけで…。

一体、わたしが知らない圭介は、どれほどいるんだろう。

「陽菜も気合いを入れろよ?何せ、今日の相手は、この旅館の御曹司だから」

「御曹司!?って、誰?」

まさか、まさか…。

「花井聖也さん。名前もしっかり覚えとけ」
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