優しいカレの切ない隠し事


やっぱり聖也なんだ。

どうしよう…。

これから顔を合わせるというの?

別れてから約3年。

ずっと会っていないし、何しろ別れ方が気まずい。

今さらわたしと再会して、聖也はどう思うだろう。

それを考えると、緊張で心臓がバクバクする。

「失礼します。松山です」

圭介は旅館の玄関から入ると、応対した仲居さんに用件を告げ、別室へと案内された。

そこは、中庭が見える応接間で、椅子とテーブルが置かれている。

まるで、一般家庭の応接間の様でリラックス出来る雰囲気だ。

といっても、今から聖也が来るかもしれないと思うと、その雰囲気には浸れなかった。

圭介と二人座っていると、ドアがノックされる音が聞こえてきた。

「お待たせしました。花井です」

それは、胸に切なさが広がるほど、懐かしい声だったのだ。
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