優しいカレの切ない隠し事
懐かしい聖也の声。
もう3年も聞いていない、感じのいい明るい声は、あの頃と何も変わっていなかった。
わたしって、分かるかな。
もし分かったとしたら、聖也はどんな顔をするだろう。
圭介に合わせる様に立ち上がり、会釈をする。
すると、
「陽菜?陽菜か?」
聖也が真っ先に口にしたのは、わたしの名前だった。
顔をまともに見れなくて、立ち上がってすぐに会釈をしたけれど、聖也には分かったらしく、驚いた声と共にこっちへ来る気配がする。
気付いた…。
気付いてくれた…。
ゆっくり顔を上げると、3年前より大人ぽくなった聖也がそこにいた。
締まった体も長身のスタイルも、そして強気な眼差しも、わたしが好きだった聖也のままだ。
「やっぱり陽菜だ。お前、あの頃と全然変わらないな」
懐かしそうに目を細めた聖也は、わたしの手を取る。
それはきっと、ほとんど無意識だったんだろうけど、隣にいる圭介を動揺させるには十分だったらしい。
「知り合いなのか?」
そう聞いてきた圭介の声が、震えていたから。