優しいカレの切ない隠し事
「あっ、松山課長ですよね。すいません、突然。陽菜もごめんな、上司の前で」
我に返った聖也は、気恥ずかしそうに手を離すと、わたしたちを椅子に促した。
学生の頃のカジュアルな聖也しか知らないわたしは、スーツ姿にドキドキする。
ホント、すっかりオトナの男だ。
「実は、オレと陽菜は学生の頃に付き合ってたんです」
わたしたちと向かい合う様に座った聖也は、圭介の質問に答える様に言ったのだった。
まさか、そんな核心にすぐに触れるとは思わず、嫌な汗が流れる。
いつもは仕事で冷静な圭介も、表情が固まっているのが分かった。
だけど、わたしたちの仲を知らない聖也は、わたしに目を向け続けた。
「陽菜に会えて良かった。あんな別れ方、全然納得出来なかったから」