優しいカレの切ない隠し事


聖也の言葉は、きっとこの3年間の本音だと思う。

圭介がわたしに栞里さんとの関係を隠している様に、わたしは聖也に別れを告げた本当の理由を隠しているから。

とはいえ、今はお互い勤務中。

聖也はそれ以上話を深掘りすることはなく、そして圭介も何も聞くことはなく、話題は取材へと移っていったのだった。

わたしも仕事だと割り切って、その時間を過ごしたけれど、旅館を後にする間際に、聖也から声をかけられた。

「陽菜、連絡先を教えてくれないか?もちろん、プライベートの」

「えっ!?」

プライベートの連絡先を教えてくれって言われても…。

圭介が隣にいて、すんなりOKなんて出来るわけがない。

「ダメか?オレ、陽菜からもう一度、3年前の話を聞きたい」

「3年前の話?」

「そうだよ。まだ納得してないから。プロポーズを断った理由を」
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