優しいカレの切ない隠し事


「そうよね。そういうことだってあるんだ…」

頭の中は、圭介でいっぱいになりながら、駐車場へ降りて行く。

車を出庫しエンジンをかけて走り出しながらも、圭介の『もしかして』の気持ちを考えていた。

仮に、圭介と栞里さんが元恋人同士だったとして…。

あの日見た出来事は、本当に圭介が栞里さんを心配してやった事として…。

それ以上の気持ちがなければ、圭介にとっての栞里さんは、元カノ以外の何者でもないって事よね?

「それに、別れた理由に何かあるかもしれないし」

そう、わたしと聖也みたいに。

それなら、圭介があんなに聖也との仲をこだわる理由も納得出来る。

圭介にとっての『今』が、わたしだけなら…。

「やっぱり、きちんと話そう。聖也との過去を隠す理由はないんだし」

それから、栞里さんとのことも軽く聞けばいいか。

『見ちゃったんだよ?』

って拗ねてみせれば、きっといつものわたしたちに戻れるよね?

甘いキスをして、そしてセックスをすれば元通り…。
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