優しいカレの切ない隠し事


「じゃあ、次の特集は『夜』をテーマに記事を作るってことで頑張ろう」

「はい!」

圭介の激でミーティングが終わり、それぞれに資料を抱えオフィスへと戻る。

「栞里さん、今日も素敵でした」

わたしが声をかけてオフィスへ戻る相手は、いつも栞里さんだ。

「もう、陽菜ちゃんはわたしを買いかぶり過ぎなのよ」

分厚い手帳と、すり減ったファイルに、栞里さんの仕事の歴史を感じる。

それが、同じ仕事をする女性として尊敬せずにはいられない。

「買いかぶってなんかいませんよ。栞里さんは、わたしの憧れです。だって、圭介のまるで右腕じゃないですか。編集部のリーダーとして、ゆくゆくは編集長ですよね?」

「ううん。とても、そこまでは…」

「えー、何でですか?」

本気で思う栞里さんの編集長姿。

それを想像して言ってみたけど、思った以上に反応が薄い。

「それより、陽菜ちゃんが頑張ってみたら?松山課長の隣で、陽菜ちゃんもミーティングしてみたいでしょ?」

「えっ!?それは、そうですけど…」

圭介の隣で手帳を広げる自分を想像して、思わずニヤけてしまった。
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