優しいカレの切ない隠し事

「戻りました」

こういう時、忙しい職場で良かったと思う。

普通に帰れば、誰もいちいち顔を見ない。

ましてや、様子なんて伺わないから。

今は人と顔を合わせるのも辛いから、原稿作成に集中しよう。

そう思っていた時、圭介がデスクへやって来たのだった。

「花井、報告聞きたいからミーティングルームに来て」

初姫神社から帰ってきていた圭介は、やっぱり様子がいつもと違う。

どこか切羽詰まった印象だ。

本当は、二人きりになんてなりたくないけど、みんなの前で拒否をすると目立ってしまう。

だから仕方なく、指示に従ったのだった。

それにしても、栞里さんはどこだろう。

姿が見えないけど…。

ミーティングルームに入るなり、圭介はお決まりの様に鍵をかけたのだった。

「遅かったな。そんなに話が盛り上がったのか？」