優しいカレの切ない隠し事


「やめてよ…」

温かい圭介の手を離すと、出庫されてきた車に乗り込んだ。

栞里さんとキスをしていたくせに、どうしてこんなことをするの?

わたし、圭介の本音が全然分からない。

そんなことを考えている間にも圭介も車に乗り込み、早々にエンジンをかけ走らせた。

車内で会話はなくて、重苦しい空気が流れるだけ。

どうして、こんなことになっちゃったんだろう。

それを考えてみたら、わたしが圭介との同棲を断ってから、おかしくなったんだと気付いた。

もし、あの時それを受け入れてたら、こんな風にはなってなかった?

でも、そしたら栞里さんとの仲に、気付かないままだったよね。

二人は元恋人同士、そうなんでしょ…?
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