優しいカレの切ない隠し事
久しぶりの圭介のマンションは、やっぱり懐かしくて落ち着く。
あんな場面を目撃して、嫌いになれたらどんなに楽だろう。
それが出来なくて、こうやってマンションに来たら落ち着いて、自分でもどうしたいのかが、全然分からない。
そんなことを考えながら、呆然とリビングに立ち尽くす。
すると、そのわたしの後ろから、圭介が突然抱きしめてきたのだった。
「やだっ…。やめてよ」
「何で?何で、そんなに嫌がるんだよ」
圭介は、わたしの耳に吐息をかけるように囁く。
本当は胸がキュンとする。
今すぐにでも、圭介の気持ちに応えたいくらい。
だけど、栞里さんとのキスシーンが脳裏を過ぎり、嫌悪感を抱くのも本音。
心のモヤモヤが何も解決しないまま、流されるのだけは嫌だった。