優しいカレの切ない隠し事
「陽菜…」
圭介は、わたしを振り向かせると、そのまま顔を近付けてくる。
それがキスをしようとしていると分かり、思わず体を押しのけていた。
「何するんだよ陽菜」
圭介には予想外の行動だったのか、眉間にシワを寄せて睨んでいる。
「だって、キス…したくないから」
「何でだよ」
「したくないものは、したくないの!」
この後に及んでも、まだ栞里さんの話が出来ない自分が情けないけど、核心に触れる勇気がない。
だけど、圭介を拒むことは出来た。
ただそれは、圭介の逆鱗に触れたらしく、わたしの腕を乱暴に掴むと力任せに引き寄せたのだった。
「い、痛いじゃない。何するのよ」
今度は、簡単には振り払えないほど、力を入れられている。
「何するじゃないよ。それはこっちのセリフ。いつの間に、キスするのも嫌なほど、オレから心離れたんだ?」