右隣の彼
報告
『け・・けっこん~~~~?!』
「ちょ・・ちょっと声が大きすぎるって」
身を屈め眉間に皺を思いっきり寄せて2人の興奮をなんとか
抑えようとしていた。
賑やかな居酒屋で女2人の叫びにも近い声は予想以上に響き渡り
周りのテーブル席からかなりの視線を集めてしまった。
でも目の前の2人には周りからの視線などなんとも思っておらず
「声が大きくもなるよ~。いきなり結婚って誰とよ~」
普段おっとりしているしーちゃんが興奮しながら身を乗り出した。
「それは~同じ会社の後輩のー」
「岸田くん?」
相手を言い当てたのはあっこだった。
「え?なんで?あっこが一美の相手知ってんの?っていうかその岸田くんって
人であってるの?」
シーちゃんは私とあっこの顔を交互に見た。
「はいその通りです」
しーちゃんは頬に手を当てながら興奮がマックスになっていた。
「ねっ!その人どんな人?あっこ見たことあるんだよね。名前当てちゃうくらいだから・・・」
なぜかしーちゃんは岸田くんのことをあっこに聞いていた。
「そりゃ~もうかなりのイケメンだよ~。でもさ・・・岸田くんって彼女いたんじゃなかった?」
あの時岸田くんはあっこの彼氏を紹介してもらう席に同席していた。
あれは単に幸せな2人を目の前に自分が耐えられる自身がなかったからなんだけど・・・
岸田くんは一応彼女がいるってことになってたから
あっこが疑問に思うのは当たり前だ。
「実は~彼女は元々いなかったんだよね。あの時は私も知らなかったんだけど・・・」
「やっぱりね・・・」
もっとびっくりすると思った。
だけどあっこの口から出た言葉は何もかもわかっているような口ぶりだった。
「え?」
「岸田くんの態度みりゃ~あんたのことが好きだって事すぐわかったけどね。
それに一美が全く気が付いていないってものわかってたけど」
ええええ?!
なにそれ・・・あっこは初めて会った岸田くんを見てすぐにわかっていうの?
だったらわたしって相当なー
「一美って昔から頭が切れる子だったけど恋愛だけは超が付くほど鈍感だったもんね~~」
普段おっとりしているしーちゃんだが、時々あっこよりもズバッと言う。
しかも結婚して子供が出来てからのしーちゃんはいろんな意味で強くなった。