二重螺旋の夏の夜
「ごめんね、急に誘っちゃったりして。彼氏さん怒ってない?」

「遅くなると連絡はしたので、大丈夫です」

「そういう意味じゃないんだけどね。俺と2人ってことは内緒でよろしく」

会社から駅までの間にある居酒屋の半個室に、早見さんと向かい合って座った。

雅基と行くような小綺麗でおしゃれなレストランでも、井口さんと3人で行くようなにぎやかな大衆居酒屋でもなく、落ち着いているけど静まり返ってもいない、隠れ家のような雰囲気のお店だった。

「すみません、ご心配をおかけしてしまっているようで…」

「…うん。プライベートなことに首突っ込む権利とかないだろうけど、もうこれ以上見ていられないな、って思って」

「……」

「今年度になってからずっとつらそうだよ、神崎ちゃん。体調も良くなさそうだし、ここ最近はいつ倒れてもおかしくない顔してる」

思わず肩がびくりと跳ねた。

雅基が酔ってしゃべっていたあの電話を聞いてしまってから、食事があんまりのどを通らなくなってしまったし、眠れない日も続いていた。

心当たりがあるなんてもんじゃない、ありすぎる。
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