お姫様の召使の言いなり
“奢る”なんて一言も言った覚えないんだけどな。



まあでも、出てしまったお金のことをいちいちねちっこく言うほど、ぼくはケチな奴でも、貧乏でもない。



どうせ100円200円のシェイクなんだし。



…ぼくがかわいい子に弱いだけなのかもしれない。



そんなことはこの際どっちだって構わないんだ。



仕切り直しの意味も込め、頬杖をついたまま溜め息をこぼしてから、尋ねた。



「じゃあまず一つめ。君、誰?」



「誰だと思う?」



挑発的な笑みを向けた。



「質問を質問で返されたらきりがないよ」



それでもまだ答えてほしそうにこちらを見る。



仕方なく当てずっぽうで答えた。



「…昔、近所に住んでたとか?」



「違う。ちょっと近いけど全然違う」



どっちなんだよ。



ツッこんでしまいたくなるのを必死に抑える。



年下相手に、マジになっちゃだめだ。



じっと見ていたら、



「“昔”って所は合ってるかな」



にっこりと微笑んで答えてくれた。



もしかして考えてることバレた!?



まさか…偶然だよね。



「えーっと、名前は?」



この子にペースにハマったらいけない。



本能がそう警告してくる。



「召使」



「え?」



ストローを見つめながら、本当になんでもないような顔をしている。



聞き返すと、顔だけこちらに向かせた。



「好きなように呼んでよ」



それだけ言うと、またストローに視線を移しシェイクをすすった。

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