貴方の心フル受信

「あなたが好きです」

 奴がせりふを言うと、周りからため息がこぼれる。

 そして「あんなふうに言われてみたい」と女子が言い、男子は羨望のまなざしで見つめる。

「ほら、夏も見習って!」

「う、うん…」


 未亜に答えながら、私は自分の心に異変を感じていた。




 私は奴のことが嫌い。

 大嫌い。


 なのに。



 奴が『好き』というせりふを言うたびに胸の置くがぎゅっと狭くなる…




 違う、

 私はせりふに反応しているんじゃない。




 ただ、自分のうまく行かないところができている奴のことが、胸が苦しくなるくらいに嫌いなんだ。







 無理やりにでも、そう思うしかなかった。


 そうでもしないと、私は私でいられないような気がしたから…―――






 


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