キヲクの片隅
「…ありがとな、翔」
「ん、いーってことよ!」
「俺、花火大会行ったんだね」
翔は黙って笑ってくれた。
なんだか少し切なそうな顔で。
「それでは俺は数学嫌いなので、遊びにでも行ってくるわ!」
僕の肩にぽん、と手を置いてから、翔は金属音を響かせながら手をヒラヒラと振って消えたいった。
昔の思い出か…
僕は一人、目を閉じた。
過去の思い出とゆうものは懐かしくなったり、愛しくなったりするものなのだろうか。
思い出したくなる思い出なんて僕には何もない。
ただ、全てが暗かったこと。
それだけは覚えてる。
それでも光はあった気がするが、暗闇が深すぎてその光がなんだったのかを思い出せない。
今の僕には昔のことなんてどうでもいい。
多分、覚えていたくないから忘れてるんだ。
そんな過去を今さら思い出しても無意味だ。
僕は、中学までの記憶を知らない。
何も、思い出せない。