キヲクの片隅

「じゃ、またあとでな」

翔と別れて僕は真っ直ぐ家に帰る。

見慣れた建物の前に着き、一度止まって鞄から鍵を出す。

その鍵を手に持ちまた少し歩く。

ドアの鍵を回し中に入る。

今日も1日が終わり少し溜め息をつく。

「ただいま」

と言っても誰かの返事があるわけでもなくて。

目の前には照明が消え、カーテンの隙間から夕日が差し込み赤くなっている部屋があるだけ。

いつもとなんら変わりはない。

広がるのは有り余った1LDK。
必要最低限の物しかなく、半分以上はガランとしている。

この部屋に一人で住んでいて寂しいなんて思ったことはない。

一人静かな部屋で本を読んだり勉強したりするのは落ち着くし、それが僕にとってはずっと当たり前な毎日。

いつもの定位置に鞄を置いて、制服のまま吸い込まれるようにソファーに倒れる。

チラッと、テレビの横に置いてある時計を見る。

翔が来るまであと一時間半位か。
先に風呂に入って少し物を片付けなきゃ…。
あ、そういえば飲み物が何もなかった気がする。
翔が来るまでにコンビニに行って…。

今から自分がやるべきことを整理する。

しかし、体が重い。

「あ~…。なんか、眠い」

僕はポツリと呟く。

夕日が少し眩しくて、僕は右腕で目を塞いだ。

このまま、寝てしまいそうだ…。

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