キヲクの片隅

「そういえば優人、まだ親から連絡ないのか?」

「…うん、全然」

「そっか…。優人どうするんだ?この先」

「ん…。今はお金だけには困ってないし、高校卒業したらとりあえずじいちゃんのそばにいるかな」

僕はバイトをしていないしじいちゃんにもらっているわけでもないが、お金には困っていない。

その理由は両親にある。

顔も、声も、何もかも覚えていない。

中学までの記憶がない僕。
高校に入る時にじいちゃんに教えてもらった。

僕を生んで少ししてから、じいちゃんとばあちゃんに僕を託して何処かへ消えてしまったこと。

しかしじいちゃんの銀行口座には毎月決まった日に、決まった額が入っていること。

それは僕が学校に通うには十分すぎる額だと、じいちゃんは言っていた。

だから小さい頃からずっとじいちゃんとばあちゃんに世話をしてもらっていた。

中学までの記憶がないことで、じいちゃんとばあちゃんには本当に苦労をかけたと思う。

勉強は頑張った。
いつか立派になって、じいちゃんには不自由ない幸せな生活をさせてあげたい。

記憶がなくなったらしい直前に、今の高校の合格は決まっていたらしいから、それはよかった。
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