キヲクの片隅

僕と翔は一番後ろの車両に乗り込み、一番端の席に腰を掛けた。

ガタンゴトンと電車が揺れる。
それに合わせて体も揺れる。

外の景色を見ると、ビルが立ち並ぶ風景から徐々に緑が増えてくる。

ああ、やっぱりこっちは田舎だな。

田舎が嫌いなわけじゃない。
どっちかというと、高いビルがなくて山が近くに見えて、木が沢山あるこの景色の方が好きだ。

この僕の元々住んでいた場所の方が落ち着く。

ぼーっと、座っている反対側の窓から景色を見続ける。

目的地に近づくにつれ変な気持ちが込み上げる。
じいちゃんちに行く時には必ずそう。


なぜか、涙が出そうになるんだ。


そんなに僕は田舎が好きなのかな?
ははっと、心の中で笑う。

「じいさん喜んでくれるといいな」

「うん、びっくりして倒れなきゃいいけどな」

翔と顔を見合わせながら少し笑い合う。

翔もあまり喋らずにずっと外の景色を見ていた。

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