キヲクの片隅
目が合う。
なんだか驚いて今にも泣き出しそうな顔をしていた。
こちらをそのままじっと見ている。
黒目がちな瞳が僕を離さなかった。
急に現れたからビックリさせちゃったかな?
年は僕の少し下くらいかな?
白い着物の様なものを着ている。
帯は鮮やかな青色。
肩まである髪はくっきりとした黒色で、白い着物とよく似合っていた。
ここの神社の子かな?
僕は驚かせてしまったことを謝るために声を掛けた。
「こんにちは。驚かせちゃってごめんね」
「…えっ、いえ…。大丈夫です…」
声をかけたことにもびっくりしたのか、少し戸惑っている様に見えた。
「君、ここの子?」
なんとなく質問してみた。
「あ…はい」
「そっか。その白い着物よく似合ってるね」
僕は素直に思った事を伝えた。
本当によく似合ってると思ったから。
「…」
女の子は黙って俯いてしまった。
いきなり知らない男に褒められたりして、少し怖かったかな?
僕は少し慌ててしまった。
「あ…機嫌悪くしちゃったなら謝るよ、ごめんね!」
僕は俯いている女の子に近づき、彼女の身長に合わせて屈み顔をそっと覗く。
長い睫毛。
とても華奢で身長も小さい。
髪も風になびいてさらさらしている。
その黒髪に映える色白の肌は透き通っているようだ。
とても、綺麗な子だな…。
伏せていた目は、また僕を捕まえる。
大きくて力強い瞳。
目を反らせなかった。
彼女の瞳を僕もずっと見ていた。
吸い込まれそうだ。
僕の全てを見透かされそうで。