キヲクの片隅
女の子は一瞬黙り込んでしまった。
あ、嫌だったかな?
しかし僕の瞳をしっかり捉えて言った。
「ユキ」
名前を聞いた瞬間、僕の中に感じたことのないような何かが走った。
なんだ、これ。
ユキなんてよくある名前なのに。
鼓動が早くなるのが自分でもわかった。
何かがおかしい。
何かが心の中に差し込んだ気がした。
そして彼女の名前と姿をもう一度意識した時、また一段と鼓動が早くなった。
胸を自分の拳で押さえる。
目の前に居るそのユキとゆう女の子は、僕の目を見つめながら少しだけ笑っていた。
それは、とても優しく。
なんで、どうして…
こんなにも
「どうしたの?優人さん」
「いや…なんでも、ないよ」
「でも、泣いてるよ」
涙が、止まらないんだ。