キヲクの片隅
僕は石階段を小走りで降りていく。
辺りを見回すとキョロキョロ僕を探している翔の姿。
「翔、ごめん」
「…あ、こんなところにいた!探しちゃったじゃねーか。どこウロウロしてたんだよ」
また心配をかけてしまった。
少し呆れ顔の翔。
「そこの神社に寄ってたんだ。こんな所に神社なんてあったの知らなかったよ」
笑いながら僕がいなかった理由を説明する。
「この神社にいたのか…?」
翔が一瞬険しい表情を見せた。
「うん?そうだよ」
「何してたんだ…?」
翔の声のトーンがどんどん下がっていくのが分かった。
どうしてこんなに複雑そうな顔をしているのだろう?
「ユキちゃんってゆう女の子がいてさ、少し話をしてたんだ。中学生くらいかな?」
「…え?」
「多分神社の子だと思う。すごく可愛らしい女の子だったよ」
翔の表情がみるみるうちに雲っていく。
言葉もあまり発しなくなった。
「翔、どうしたんだよ」
「…」
「…翔?」
心配になって翔の顔を覗き込む。
「あ、あぁ…。なんでもない。そっか、ならしょうがないな。じいさんも心配してたから早く帰ろう」
「うん…?」
翔はそう言うと、スタスタとじいちゃんちに向かって行った。