キヲクの片隅
「おーい優人!これここでいいかー?」
「うん、いいと思うよ」
僕らはお腹いっぱいになった後、じいちゃんに頼まれた倉の片付けを始めた。
じいちゃんももう年だし、倉の中に来ることも少なくなってきて荷物にはほこりが被っている。
いつ使われたかわからない道具や、いつから開けられてないのかわからない古びた箱。
そんなものが溢れている。
変わった物が出てきそうでちょっとわくわくする。
黙々と作業を進める。
大分片付いてきたな。
「うわっ!」
カラン、バサバサっと、翔の手から缶の箱が落ちて中身が少し散乱した。
「うわー、ごめん」
「いいよ。またしまえばいいし」
僕は散らかった缶の中身を拾う。
ふと、一枚の写真が目に入った。
小学生位の男の子二人と女の子が一人。
仲良さそうに並んで無邪気にピースをしている。
しかし女の子の顔は汚れてしまっていてはっきりとは認識できない。
というかこれ…僕と翔?
「うわ!懐かしいなそれ」
翔が僕の後ろから写真を覗き見る。
「これ、やっぱり俺と翔?」
「あぁ。多分小学校の時だよ。あの頃は裏の山によく遊びに行ってたんだよ」
「そうだったんだ…」
写真の中の僕達はすごく楽しそうで、だけど全く思い出せない自分自身が少し嫌になった。
この写真の様に、楽しくて心から笑っていたことを僕は覚えていない。
昔の写真を見て懐かしむどころかどんどん悲しくなる。
もし僕にこの頃の記憶があったなら、今ここで翔と二人で思い出話に浸っていたんだろう。
記憶が無いことがこんなにも虚しいと、改めて思い知らされる。