キヲクの片隅

「なぁ、翔」

「ん?なんだ?」

「この女の子…誰?」

顔が汚れてしまって分からなくなっている女の子が少しだけ気になった。
写真を見るとすごく仲良くしていたことがわかる。

「あぁ、それは…」

ハッとした様に翔は口を閉じた。

「?」

「…あ~、誰だっけ。忘れた」

そう言ってまた手を動かし始めた翔。

どうもさっきから色々と隠し事をされてる気がする。

「なあ、俺になんか隠してるだろ」

「いや、そんなことないけど」

翔は笑っているが、それが苦笑いだとすぐにわかった。

「俺が昔のこと何も覚えてないのは翔もわかってるよな?…俺、自分のことをもっとよく知りたいんだよ」

「…」

「少しでいいから、今翔が俺に隠してること教えてくれないか?」

初めて翔に問い詰めた気がした。
初めて自分の過去に欲が出た。

頼れるのは翔しかいない。

けれど翔は

「俺からは言えない。優人が自分で思い出さなきゃ意味がない」

それ以上は何も話してはくれなかった。
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