キヲクの片隅

神矢さんの話


「3年。死んでしまった者の魂に与えられる最期の時間です」

「ではその3年とゆう期間はなんなのか。…逢いたい人の元へ行けるのです。空へ還りまた生まれ変わる前にできる、神から魂への最後の贈り物なのです」

なんだかこの話もどこかで聞いたような気がする…。
どこで、聞いたんだっけ?

「そしてもし、その3年の中で逢いたい人に会えたときに『最期の願い』が叶います」

「『最期の願い』は魂それぞれです。きっと様々な願いがある筈です」

穏やかに、ゆっくりと話をしてくれる神矢さん。

「恨み妬み等は却下…ですがね」

神矢さんが小声で何か言った気がしたが聞き取れなかった。

「?」

僕は神矢さんを見ながら首を傾げた。

「ただの老人の独り言ですよ」

フフっと神矢さんが笑ったので僕も笑っておいた。

「みんな願いが叶うといいですね」

しかし僕はそのおとぎ話の様な話に少しだけ感動を覚えた。
そんな素敵な事が死んだ後も残っているなんて。
段々、今聞いている話を信じている自分がいた。

「しかし、条件があるのです」

「条件?」

「ええ。それはなんだと思いますか?」

僕は少し眉間にしわを作り考えたが、全く見当がつかない。

「逢いたいと願っている相手も、逢いたいと願っていなければなりません」

神矢さんの癖なのか、綺麗に整えてある髭を撫でながら僕に教えてくれた。

「死んだ者がどれだけまた逢いたいと願っても、相思相愛でなければ会えないのです」

「そしてあともう一つ」

「魂に残された時間は3年です。それしか残されていないのです。2年目に思いが通じあったら、二人に残された時間はあと1年とゆうことになります」
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