キヲクの片隅
「…っ」
目頭が急に熱くなった。
僕が記憶を失ったことで一人で大変だったはずのじいちゃん。
そんなじいちゃんを死んだ後も支えてくれていたばあちゃん。
そんなばあちゃんを僕は覚えていないなんて。
僕は二人にどれだけ迷惑をかけてきたのだろう。
自分への嫌悪感がどんどん溢れ出してくる。
自分が嫌で嫌でたまらない。
何故僕は記憶を無くしてしまったんだ。
無くしてしまった理由もわからない。
「ぅ…っ」
思い出さなきゃいけない。
二人にちゃんと恩返しがしたい。
翔にも迷惑をかけている。
「優人さん、大丈夫ですか?」
「はい…すみません、急に」
帰ったらじいちゃんにばあちゃんの話を聞こう。
何か少しでも思い出すかもしれない。