キヲクの片隅

「神矢さん、ありがとうございました」

「いいえ、こちらこそ。お話を聞いて頂いてありがとうございます」

僕は袖で涙を拭う。

「今日は帰ります。また遊びに来てもいいですか?」

「もちろんですとも。またいつでも来てくださいね」

神矢さんの笑顔は相変わらず優しい。
僕も自然に頬が緩む。

石階段を降りる。

「優人さん!」

神矢さんが僕の後ろ姿に声を掛けた。
ゆっくりと振り向く。

「魂は思い入れのあるひとつの場所にしか居ることができません。それだけは忘れずに」

僕はまた首を傾げた。

「あの、それってー…」

強い風が吹いた。
僕は思わず目を瞑ってしまう。

目を開けると、神矢さんの姿はもう無くなっていた。

残されたのは星空に照らされている神社だけだった。
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