キヲクの片隅
「ちょっとちょっと~、お二人さんっ!」
向き合っていた僕たちの間に、テンションの高い声で誰かが割り込んできた。
まぁ、誰かは決まっているのだけど。
「翔」
僕は目の前にいる男の名前を呼ぶ。
「何いちゃいちゃしてんのー!見せつけてくれるねえ」
僕の二の腕にぐりぐりと自分の肘を押し付けながら翔は言う。
学校の玄関にある自販機で買ったバナナオレを飲みながら話しかけてきた翔は、とても甘い匂いがする。
翔は歩く度に金属音が鳴るからすぐにわかる。
金に近い髪色で制服の着方は校則違反。
首や腕にはネックレスとブレスレット。
だけどどれも翔の端正な顔立ちに似合っていて、僕はそんな翔をかっこいいと思う。
やりたいことをおもいっきりやる翔が、僕はすごく羨ましいし少し憧れている。
翔は昔からの友達。
唯一ずっと進路が同じ。
翔は僕になら何でも話せる。
と、翔が教えてくれた。
僕も翔には何でも話せる。