泣く心【本編】
慎「おい分かったなら帰れ!」


俺が怒鳴ると女は散り散りに去っていく




残されたのは俺とこいつだけ




慎「大丈夫か?」



地面に座りこんだ状態で起き上がったまま動かない湊川に声をかける



類「…………」



聞いてんのか聞いてないのか反応がない



慎「お前、一人で闘いを挑むとかバカだろ」


はーっと溜め息を吐く



慎「もう少し自分の強さとか考えて行動しろ」



類「…………」



無視…してんのか?

この俺を?




慎「おい」



類「……ありがとう…ございます」



か細く聞こえた湊川の声

まるで棒読みだった



湊川はすくっと立ち上がるとどこかへと歩き出す



こいつは…傷だらけだ


服には所々砂がついていて

血が滲んでいる



俺らの族でも痛みに悲鳴をあげそうなくらい酷い傷なのに

なんともないかのように歩いていく湊川








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