吸血鬼と魔法使い
「ねぇ、恋憂…」
「なぁに??元気ないね。
絆愛らしくないよー??」
「魔法使いになりたい…」
「…うん、頑張れ」
"魔法使いになりたい" そんな
子供っぽい夢から、
それは妄想に変わった。
妄想は高校に入った今でも続いている。
…私、天宮絆愛は妄想大好きな、
ただの平凡な女子。 友達はただ1人。
それはそれは理解のあるお方です。
学力普通 運動普通 容姿最悪 性格最悪
それが私。
「魔女の末裔」
そんな妄想に付き合ってくれるのは、
恋憂だけ。
末裔なんてそんなの嘘。
サラリーマンと専業主婦の娘で、
3人兄弟の真ん中。
魔法が使えるなんて嘘。
出来るのは、不器用な愛想笑いと
恋憂の後ろに隠れることだけ。
試練なんて嘘。 雨が降ってるだけ。
…まぁ、今の私にとっては
それも試練かもしれない。
傘を忘れるという大失態を犯したからだ。
そんな失態も、今まさに恋憂の
「普段から折り畳み傘持ち歩いてるから」
と差し伸べられた可愛らしい傘によって
助かったところだ。
恋憂自身は普通に傘を持っていた。
「これが女子力…??」
零れ出る言葉と溜め息を
恋憂は気にも止めず、歩き出した。