偽りの香りで


当時彼氏と別れたばかりだった姉に猛アプローチして、ふたりはそれから一ヶ月ほどで付き合い出した。

彼が姉と付き合い出したとき、私はふたりを心から祝福した。

彼には、姉との出会いを作ったことに恩を着せて、食事を奢ってもらったりした。

でも……

そんなふうにふたりを祝福できたのは最初の数ヶ月だけだった。

姉と付き合いだしてから、彼と私の交流は目に見えて少なくなった。

メールや電話の頻度も減った。

仕事帰りに飲みに行くこともほぼなくなった。

それはきっと当然のことなのだろうけど、私はひどく淋しくて。

仕事をしていても、休日にどこかへ出かけていても、何をしても心が充足しなかった。

そんな日々が続いていたとき、ひさしぶりに彼から仕事帰りに飲みに行こうと誘いがあった。

その日は朝から気持ちが浮き足立っていた。



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