矢野さん
 暫くして煙草が吸い終わるとゆっくり重たい腰を上げた。

 その時――。

「いってーな!!どこ見てんだこのブス!」

 怒鳴りあげる男の声が聞こえた。

 ハッとして矢野を見ると案の定、一人の男が矢野に絡んでいる。

 しかもかなり柄が悪そうだ。

 うげ!矢野なんつー奴に絡まれてんだよ!

 酔っ払いに絡まれただけで小さくなっていた矢野からすると、怖くて固まっているかもしれない。

 ヤバすぎだろ……。

 流石に矢野の身の危険を感じて慌てて矢野の元へ向かう。

「すいま――」

 穏便に済まそうと俺が謝ろうとした時――。

「痛いのはこっちですよ!!貴方こそどこ見て歩いてるんですか!?」

 俺の心配をよそに、矢野が男に勢いよく言い返した。

 予想外の行動に目が点になる

 あ……あれ?

 ちょっと……矢野さん……?

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