矢野さん
「橘さんは関係ないでしょ!?謝りな――」

「矢野さん!いいから!――あの、本当にすいませんでした」

 また男にくってかかろうと矢野が俺の後ろから出てこようとしたので、手を掴んで再び自分の背中に隠す。

 矢野ー!お前が出るとややこしくなるっつーの!

「ふん。今度から気を付けろよ。後そのブス調教しとけ」

 そう言うと男が俺達から去っていった。

 ホッ……。

 なんとか無事に終わってよかった。

 と思ったと同時に握っていた俺の手を振り払い矢野が俺の前に立った。

「なんで謝るんですか!?」

 そう言うと、俺を睨み付けてくる。

「あんなケチをつけてくる奴なんていくらでもいる。一々相手してられないだろ?とりあえず謝れば済むこと多いんだし、悪くなくても謝ればいいんだよ」

「悪くないのに謝るなんて間違ってます!」

俺を睨んだままの矢野を見てハァっとため息を吐く

「矢野さんさー、今回は俺が居たからよかったけどあんな様子じゃ男に何されるか分かんないよ?」

「何ってなんですか?」

「拉致されたり殴られたり。相手は男なんだし女が敵うわけないだろ?」

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