矢野さん
そう言いながら開けた箱をしまった


お互い注文が決まると近くの店員に声を掛けオーダーした


「あと悪いんだけど、これ生物(なまもの)だから帰るまで冷蔵庫に置いてて欲しいんだけど、いいかな?」


お得意の笑顔で女性店員に言うとポッと赤くなり「わかりました」と箱を受け取り厨房へ入って行った


「人多いですね。いつもこんなに多いんですか?」


周りをキョロキョロしながら矢野が尋ねてきた


「結構人気の店だからね。だいたいいつもこんな感じだよ」


「へー……」


店の中をマジマジと見渡す矢野を頬杖をついてじっと見つめる


その視線に気づいた矢野と目が合った


「あのさ……聞きたいことあるんだけど」


「はい。何ですか」


キョトンとした顔で矢野が答える


頬杖から両手をテーブルの上で腕組みの様にして座り視線を矢野から外す


「昨日さ、前に映画館で待ち合わせした時に矢野さんと話してた男と会ったんだけど……」


「え!?」


驚いた声を上げた矢野を見るとその顔はさっきまでの顔色とは違い青くなった様に見える
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