矢野さん
「夜道は危ないし」

 矢野なら大丈夫だから……

「駅まで少し距離あるんだし」

 だから大丈夫だって……

「ね?送って貰いなよ矢野さん」

 絶対大丈夫だからー!!

 誰も矢野なんか襲う人間いないから!

 てか俺が送る前提で話してるし!

 つけたばかりの煙草を動揺して消してしまった。

 顔がかなりひきつってるのが自分でもわかる。

「いえ、タクシーで帰りますから」

 と言う矢野の顔はあからさまに嫌だと言わんばかりの顔だ。

 安心しろ矢野……俺もお前と同じ気持ちだ。

「ここからだとタクシー代かかるよ。橘くんも送ってくれるみたいだし。ね?」

 あの……俺送るって言いましたっけ?
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