矢野さん
 心配そうに言う祐子さんに矢野も困った様子だったが、しつこく祐子さんが押すから矢野が「……わかりました」と承諾してしまった。

 やっぱり今日残業やってればよかった――。

 こんなまったく全然ちっとも楽しくないコンパなんか来なければよかった……。後悔先に立たず。

 もういいや……好きにしてくれ……。

「じゃあ、矢野さん送るよ」

 開き直った俺はそう言うと席を立ちコートを羽織る。

 後ろから赤崎が「矢野さんこいつ女にすぐ手出すから気を付けてねー」と笑いながら言ってきた。

 矢野が軽蔑するような視線を送ってきたがそれに気づかないフリをして店を出た。

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