矢野さん
「橘。どうしたんだよ……。あいつ知り合いなのか?」


 ギりッと歯を噛み締め、力一杯手を握りしめている俺に吉澤は心配そうな顔で聞いてきた。


「あいつ……。矢野さんから金奪ってる……」


「はぁ!?」


 俺の言葉に吉澤と赤崎は驚いた顔をした。


「俺が矢野さんに近づいてんのも金の為だろって……――許せねぇ!!」


 怒りから再び握り締める拳が震える――。


「さっきの奴と矢野さんは知り合いなのか?」


 吉澤は男が帰っていった方向に顔を向けながら聞いてきた。


「ああ。あいつにはぐらかされたけど、お互い名前で呼びあってる関係だから、親しいのかもしれない」
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