矢野さん

「祐介がお金要求してきた電話を録音してる」


　その言葉に男は目を見開いた。


「いつか警察に行こうと思って録ってた……。今日のだってちゃんと録ってる！それに橘さんが祐介から直接私からお金取ってるって聞いたって言ってた。第三者の証言。これも証拠だよ」


　矢野……。


　睨む様に男を見つめる矢野の瞳は凛として男を捉えている。


　今までいいなりになっていた分、男に逆らうのはとても勇気がいるだろう……。


　あんな瞳をしていても、本当は凄い怖いんだろう……。


　でも……やっぱり矢野は強い……。


　瞳に溜まった涙を流さまいと堪えながら睨む矢野に、男が一瞬怯んだ様にも見えた。