矢野さん
 言葉だけじゃない――俺の想いも、矢野には届かない……。


「……好きだから……好きなんだ……矢野さんが……」


 なら、せめて言わせて――。


 君に届かなくてもいいから。


 どうしようもなく好きなんだ。


 口に出さなきゃ辛すぎて――苦しいんだよ……。


 俺の事嫌いなの知ってる……気持ち悪いと思ってくれても構わない――でも……嘘だと思わないで……。


 この気持ちだけは否定しないで……。

 そう思うと、項垂れたままゆっくり瞼を閉じる。


 ドドドドン!!と最後の花火が上がり終わると、河川敷から拍手と歓声が上がるのが聞こえた――。


――――――――――
――――――
< 213 / 419 >

この作品をシェア

pagetop