矢野さん
 走るタクシーの外の景色を眺めながらボンヤリさっきの出来事を思い返す。


『聞いてもいいですか?』


『なに?』


『私の……何処が良かったんですか?』


 そう聞くと、橘さんはフッと笑った。


『そうだなー……我が儘な所。以外に頑固な所。強がりで泣き虫な所。素直じゃない所。でも律儀な所』


『……は?』


 一つしかいい所を言われてないし……て言うか全て悪口じゃない……。


『そう言うところ、可愛いと思う。それに俺にはない強さを矢野さんは持ってるから……たぶんそれが一番惹かれた理由だと思う』


 私を見ることなく少し目を伏せて橘さんはそう言った。
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