矢野さん
 初めてだらけだった。


 片想いをしたのも、想いを告げたのも――嫌われたのも。


 一人の女にこんなにも振り回されるなんて、滑稽に思えてくる。


 もう少し矢野と口喧嘩したかった……。色んな話したかった……。もっとメールしとけば良かったな。もっと矢野と会えば良かった。会って俺をもっと知って貰えれば、矢野は俺を見てくれただろうか……。


「……」


 暫くしてフッ鼻で笑うと煙草を消す。

 アホか俺は。嫌われてるのに矢野が頻繁にメールや俺と二人で会うなんてしないだろが。


 どっちにしろ実らない恋だったんだよ。


 でも……一つだけ聞けば良かった。


 なんで俺は嫌われているのかを――……。


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