矢野さん
「矢野さんに謝らないとずっと心にシコリが残ったままで……」


 自業自得だっつーの!


「あんたの蟠り(わだかまり)なんか知るか。矢野さんはあんたが好きだったんだ。そんな人に裏切られて苦しんでるのは矢野さんなんだよ!あんたが矢野さんを好きって言うなら、もうほっといてやれよ!!」


 後半になるにつれ怒鳴るように声を荒げた。


 男は驚いた顔をしたまま俺を見つめる。


 男を睨み付けるとそのまま背を向け、その場を後にした。

――――――――――
――――――


「はぁー……」


 席に戻ると椅子に深く腰を下ろす。


「おかえりー。話終わったのか?」


 枝豆を食べながら携帯を弄る赤崎が俺を見ることなく聞いてきた。

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