矢野さん
 祐子さんが部屋から出て行くと隣の木村さんが話かけてきた。

「いや、しかしやるねー兄ちゃん」

 なにを……?

「怖くなかったのかい?通り魔にやられて」

「あぁ、怖いって言うのはなかったですね。必死だったので……」

「かー!!大した男だ兄ちゃんは!」

 聞いていたのか斜め向かいの新木さんが話に入ってきた。

 それを聞いた原田さんが頷きながら言った。

「愛だね~愛」

 は?

「お!いい事いうじゃないか原田さん」

「だって木村さんそうだろう。愛がなきゃ出来ないよー。あんちゃん矢野ちゃんに惚れてんだねー」

 そんな訳あるかー!!

「ちがっ――」

「や~でも矢野ちゃんにこんないい男がいるとはね~」

「新木さんも思った?僕もねそう思ったよ~」

「いや橘くんだっけ?君なら安心して矢野ちゃん任せれるよ」

「あの――」

「ププ!木村さん矢野ちゃんのお父さんみたいですな」

「我が娘みたいなもんですよー矢野ちゃんはそうですよね?原田さん」

 誤解を解こうとするもおじさん達3人が盛り上がって全く喋れない。

 来てまだ数分だがもう嫌だ……この部屋……。

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