矢野さん
 そんなに時間がかかるなら沢山は作れないよな。


 矢野は沢山作って余ったと言っていたけど……別の物を沢山作ったのか?


 頭を傾げながら、そんな事を思っていると――。


「う~ん!すっごく美味しい!それにまだ少し温かいわ。きっと出来上がってすぐ持って来てくれたのね」


 そう言うと、嬉しそうにアップルパイを頬張りながら佐渡さんは自分のデスクに戻って行った。


「……」


 そうか――。


 沢山作ったから食べて欲しいって言うのは会う口実だったのか……。


 どおりで強引だと思った。


 素直に会って欲しいと言わなかったのは、断られると思ったからだろうか……。

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