矢野さん
「アホかお前!ここ病院だぞ!」

 慌ててエロ本を袋にしまう。

「うん、だから暇だろうと思って」

「暇だからって病院でエロ本見る訳ねーだろ!」

「えー?トイレで見ればいいじゃん」

 ニタニタ笑う吉澤に「そういう問題じゃねー」と言うと吸っていた煙草の火を消した。

「必要なかったみたいだな。さっき看護師見てニヤついてたし」

「違う。考え事してただけだ」

「ふーん。やらしい顔して何考えてたんだか」

 吉澤はそう言うとナースステーションに目をやり煙草吸う。

「あ、祐子さん発見ー」

 椅子に座り何か仕事をしている祐子さんを見つけた様だ。

 そういえば……。不思議に思っていた事があった。

「なぁ、吉澤は祐子さんと何で知り合ったんだ?」

「あぁ、うちの兄貴が仕事中に怪我してさー、んでここに暫く入院してたんだよ。それで見舞いによく来て仲良くなった」

「じゃあ……矢野さんも知ってたのか?」

 吉澤は灰皿にトントンと灰を落としながら「知ってたよ」と答えた。

「でもコンパに来るって言ってなかったからねー、急遽一人ダメになって祐子さんが無理矢理連れてきたんだろーね」

 吉澤はそう言うと煙草を吸う。

< 34 / 419 >

この作品をシェア

pagetop