矢野さん
「あー。確かにアレは痛かった。しかも女に殴られたの俺初めてだし」


「ごめんなさい……」


 矢野は申し訳なさそうな顔をして俯く。


「でもあれは俺が悪かったから。いくらムカつく奴でも、言っていい言葉じゃなかったと思ってるよ。軽率だった。ごめん」


 そう言うと、矢野は顔を上げ俺を見つめる。


「いえ……。だからと言って手を出していいわけじゃありません。……本当にごめんなさい」


「いや。そのお陰で自分の気持ちがはっきり分かったから、感謝してるよ」


「え?」


 意味が分からないと言った感じで矢野はキョトンとした。
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