矢野さん
 まるで捨てられた子犬を見るかのように、哀れな瞳で赤崎を見ていると、そんな視線に赤崎が気づく。


「やめろ!そんな目で俺を見るな!俺は可哀想な奴なんかじゃないからな!仕事が大事なんだ!クリスマスより俺は仕事が大事なだけなんだぁ!」


「うん……。そうだな……。仕事、大事だよな……」


 必死な赤崎に、うんうんと悲しい顔で頷くと「その顔やめろー!」と赤崎が頭を抱えて机に塞ぎ込んだ。


「じゃあ、頑張れよ。お先」


 塞ぎ込んだ赤崎の背中にそう言うと「お前なんか矢野さんに嫌われろー!」と塞ぎ込んだまま赤崎が叫ぶ声が、歩き出した俺の後ろから聞こえた。


 縁起でもない事言うな……。これから矢野とクリスマスイブを過ごすのに。


 今日はイルミネーションを見に行くということもあり、車で出社してきた。


 早々会社を出ると駐車場へ向かう。車は白のセダンタイプで何より見た目のかっこ良さが気に入っている。


 颯爽と車に乗り込むと、車内にゴミがないかチェック。


 なんか久し振りに助手席に女を乗せる事に少し緊張している。
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