矢野さん
「あ、ごめんなさい!……でも橘さんが悪いんですから。無理矢理しようとするから」


 怒った様に言うと俺から素早く離れ、膝に置いた鞄の紐をギュッ握りしめると警戒した瞳で俺を見つめた。


 くっそ……こいつ……一筋縄ではいかないな……。


 首の後ろを右手で擦りながら、矢野をジロッと睨む。


「じゃあ、いつになったらいいの?」


「いつって……もっとお互いの事を知って……」


「だから、どこまでお互いの事を知ったらキスしていいわけ?」


「え?えっと……だから……もう少し二人で会って……それから……」


 返答に困った矢野が俯いて膝に置いた鞄を見つめる。


「すっげーわかりづらい。じゃあ、矢野さんが思うキスをしていいかなって時期は、付き合っていつぐらいなわけ?」


「うーん……3ヶ月?」


 そう言いながら俯いたまま少し顔を俺に向け様子を窺う様に見つめてきた。


 はぁぁあー!?


 3ヶ月!?今時の中学生だって付き合った初日からキスぐらいするっつーの!!ふざけんな!
< 373 / 419 >

この作品をシェア

pagetop