矢野さん
 ハァーと溜め息を吐くとハンドルにもたれ掛かる。


 俺の苛立ちが伝わったのか、矢野が恐る恐る口を開いた。


「ダメですか……?」


 ハンドルにもたれ掛かったまま矢野を見つめる俺と、ゆっくり顔をあげた矢野の視線がぶつかる。


 その顔はせつなげで、悲しんでいる様にも見える。


 そんな顔をされると流石に嫌とは言えない……。


「別にダメじゃないけど……」


 小さい声でそう言うと、矢野はホッとしたように笑った。


 キスで3ヶ月……。待てよ……じゃあ……その先はいつになるんだ!?


 俺は何ヶ月お預けくらう事になるんだ!?


 今みたいに二人っきりになった時、耐えれるのか!?


 大丈夫なのかよ俺ー!!


 頭の中で大絶叫をするとドッと疲れが溢れ出てきた。
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