矢野さん
 ビールをグラスに注ぐと、二人で乾杯をした。


「お誕生おめでとう 」


「ありがとう」


 笑って言うと、ビールを一口飲んだ。


「こんなに料理作ってくれてありがとう。時間かかったでしょ?」


「うん……。でも楽しかったよ。それに、橘さんの喜ぶ顔みたかったから」


 照れた様に言う矢野に思わずドキッとする。


 可愛い事言うじゃん……。


 思わず顔が緩むのを隠す様に再びグラスに口を付ける。


 付き合って3ヶ月――。付き合いだして暫くすると、矢野の敬語を禁止させた。


 付き合ってるのに敬語なんて変だからとやめさせたのだが、お互いの呼び名は変わらず「矢野さん」と「橘さん」だ。
< 381 / 419 >

この作品をシェア

pagetop